コレクションの愉しみ —ミヨコ・ウンノ = デイヴィーさんに伺う

2011年春、三菱一号館美術館では、ジャポニスムの陶磁器、銀器、装飾品など
約180点を新たに収蔵しました。
旧所蔵者であるニューヨーク在住のミヨコ・ウンノ=デイヴィーさんに、
ジャポニスムの品々に注目した契機や収集にまつわる悦びについて伺いました。

 セントラルパーク西側にある現在の住まいに移ったのが1984年のことです。
ここが終の住処になるだろうと思いましたので、この空間に相応しい絵画や調度品を探そうと考えました。
最初に購入したのは、20世紀初頭に東海岸で活躍した日本人画家である
犬飼恭平(1886-1954)の肖像画です。大変気に入ったので、現在も応接間にかけてあります。
やがて様々なアンティーク・フェアを訪れるようになり、19世紀末から20世紀初頭にかけて
欧米で制作された全くの実用品―水差しやペーパーナイフ、スプーンやクロスなど―にまで、
ジャポニスムの意匠が多用されていることに気づきました。オークションに参加するようになったのは、
その頃のことです。

 オークションの行方は、開かれてみないと分かりません。美術工芸品の場合、世界に一点しか
存在しない品は少なく、それが市場に出てくるか否かの問題になります。オークション・ハウスは、
同一の品物が何年何月に何処のオークションにおいて幾らで売れた、という記録を持っていますので、
それにもとづいて評価額の上限と下限をカタログに記します。わたしはできるだけ過去の落札額を
記憶しておき、それにしたがってビッドしようという構えで行きます。

 けれども、いざオークションの瞬間になってしまうと、その品物をどの程度欲しいのかが重要になります。
そこで、いくらまでの超過であれば許容できるのかを念頭に置いた上で、オークションに臨みます。
約20年前、どうしても欲しかったティファニーの銀器を、やはり値が大幅に競りあがってしまったために、
見送った経験があります。 20センチメートル角の正方形のトレイで、魚たちが水面から垂れている
釣り糸には見向きもせず悠々と泳いでいる姿を浮き彫にした作品です。一昨年、同じ図柄の作品がようやく
市場に出ましたので、覚えていた落札額の3倍を出して、幸運にも作品を手にすることができました。
商品の到着後、すぐに磨いてきれいな状態にし、食卓の横にある飾り棚に置いて、毎日眺めては感慨に
浸ったものです。

ページトップへ戻る